部下や後輩に対して少し厳しく指導しただけで、パワハラと言われてしまうこの時代。
指導とパワハラとの違いに悩む人は多く、その境界線を判断するのは難しいと言われます。
パワハラには、誰が見てもわかる完全NGの行為と、ケースごとに異なるグレーゾーンが存在しています。
両者の違いを確認し、グレーゾーンに該当する場合には何に気をつけるべきかを知っておきましょう。
ここでは、パワハラになるNG行為と注意が必要な言動を紹介します。
目次
これやったら完全NGのパワハラ行為とは?
パワハラの境界線が難しいとはいえ、誰から見てもパワハラだと思われる完全NG行為も存在しています。
指導に熱が入ってつい境界線を超えていないか確認してみましょう。
ここでは、完全NGのパワハラ行為を紹介します。
暴力は論外!体育会系だろうと決して許されない
当然ながら暴力はどんな理由があろうとアウトです。
殴る蹴るはもちろん、椅子など物を投げ飛ばすような危険行為も同様。
危険がないと思われがちな水をかけるなども暴力です。
他人に水をかけて暴行罪で逮捕された事件がいくつもあるので、職場でやっても暴力行為とみなされる可能性が高いですよ。
部下がミスをしても言うことをきかなくても、社風が体育会系だろうと人に危害を加える権利は誰にもありませんよね。
人間性を否定する暴言を吐く
暴力はさすがにまずいと分かるのか、あからさまな暴力行為によるパワハラは実は多くはありません。
もっとも多いのは精神的な攻撃。
特に人間性を否定する暴言によって精神的に追い詰められるケースが多いのです。
例えば、「辞めちまえ」「無能」「給料泥棒」「病気」など。
言葉の暴力によってパワハラと認められた裁判例もあり、近年は労災認定も認められるようになりました。
言葉の場合は指導との境界線が難しいとする意見もありますが、何も難しいことはありません。
指導以前の問題として、人と人がどう接するべきかを考えてみれば、上記のような言葉が暴力的であることは理解できるはず。
上司と部下、立場が違ってもそこに存在するのは人間同士だけなのです。
理由なき解雇など職権乱用
労働契約法第十六条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められています。
労働基準法でも解雇に関してさまざまな規定が存在し、理由なき解雇は認められていません。
解雇そのものがパワハラになるというわけではありませんが、そもそも職権(パワー)
を乱用し、故意に従業員を追い詰める行為が継続していればパワハラです。
「辞めろ」「クビにするぞ」など、雇用を脅かすような言葉はパワハラ認定されやすい典型例。
仮に裁判などになれば、解雇が認められないだけでなく、それに至るまでの経緯が暴露され、パワハラだと認定される可能性もあるでしょう。
業務とは関係ない命令がある
業務とは一切関係ないのに個人的な買い物を命令される、個人のプライバシーにかかわるようなことを指摘されるなど、業務との関係性がない命令に関しても、強制力があればパワハラ行為だとされる可能性があります。
特に相手が異性の場合はセクハラとのダブルパンチの可能性も。
黒かグレーかの見極めは、業務の適正な範囲に含まれるかどうか。
部下や後輩に指示をするときは、それが業務上必要なものかどうかは常に考える必要があるでしょう。
指導とパワハラの境界線は?気をつけたいグレーゾーン
指導とパワハラとの境界線は実に曖昧。
受け取る側の問題もあって、一概にこれがだめとは言いにくいのが難しい点ですよね。
ただ、注意が必要なグレーゾーンの存在を知っておくだけでも自身のパワハラ行為の予防に役立ちます。
ここでは、注意が必要な言動を紹介します。
人前で注意すること自体に意味があるのか
同僚たちの目の前で注意を受けることは、会社員にとっては日常的な光景と言えるでしょう。
小さな指導を行うたびに個室に呼び出すわけにはいきませんから、ある程度仕方がないことですよね。
しかし、人前で怒鳴ったり、個人的な性格や資質を批判するような言動はパワハラになりやすいもの。
指導されている本人だけでなく、周囲の人にも恐怖感を与える可能性があるでしょう。
指導との境界線が難しいと思う場合は、あえて人前で長時間注意する理由を振り返ってみること。
指導者の自己満足や、周囲への見せしめ的な意味合いが本当にないかどうかを考えてみましょう。
多少なりともその意味があるという場合は、パワハラ上司になりつつある状態だと気をつけるべきです。
継続的にストレスを与えている
パワハラはそう簡単には認定されませんから、たまにミスをして厳しく叱咤されるぐらいでは業務の正常な範囲を超えているとは判断されにくいでしょう。
ただし、継続性がある場合は注意です。
毎日暴言を投げかけている、頻繁に無理なノルマを課しているなど、継続性や頻度が一つの基準になります。
最近毎日怒鳴ってばかりいると思ったら少し注意が必要。
相手が日々ストレスを感じていないか考えてみましょう。
そのノルマは本当に達成可能?
営業職などを中心に、従業員のモチベーションや競争心を高めるためにノルマを設定することがあります。
ノルマ自体は一つの目標値ですから、必ずしも悪いものではありません。
ただし、達成困難なノルマを課して、達成できなかった場合の重いペナルティを予告するなどすると、労災認定の判断に使われる「心理的負荷」の強さについて「強」と認定される可能性があります。
つまり、ノルマは一歩間違えると、労災とされる精神疾患の要因になり得るということ。
ノルマはある程度必要なものではありますが、現実的に達成可能かどうか、精神面への影響も慎重に考えなくてはなりません。
業務による心理的負荷の評価に関しては、厚労省作成のパンフレットなどに具体例を踏まえて細かく記載されていますので一度目を通してみましょう。
参照:厚生労働省HPより「精神障害の労災認定」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/120427.html
「誰か一人だけ」はパワハラになりやすい
職場内で一人だけ皆と同じように仕事ができない部下がいることはありますよね。
年齢も性別も性格もさまざまなタイプが集まる会社ですから、一人や二人は上司から見た問題児はいるものです。
ただ、誰か一人だけを集中的に指導するのは気をつけたいところ。
一人だけ仕事ができないのだから仕方がないと思うかもしれませんが、単なる個人攻撃だと思われる可能性もあるのです。
問題児の対応は頭を悩ませるところですが、自身が熱心になりすぎるのではなく、他の部下たちの力を借りて指導方法を工夫しましょう。
指導者との相性もあるので、別の人が指導することによって伸び伸び力を発揮できることもありますよ。
無視や仕事を与えないこともパワハラになり得る
過剰なノルマもパワハラになりますが、反対に仕事を与えないこともパワハラになり得ます。
極端に簡単な仕事だけをやらせて意欲を削ぐように仕向けたり、他の職種なのに掃除や草むしりを一人だけやらせるなど。
あからさまな行為があれば「過小な要求」と言われてパワハラと認定されることがあります。
仕事の能力的に簡単な仕事をやらせる必要があると判断した場合は、これができるようになったら次はこれと、ステップアップできる道筋をきちんと提示すること。
本人も目標が持ててモチベーションを保つことができます。
育てるために必要なことをしているということを分かってもらう工夫をしましょう。
また、挨拶に対して無視する、一人だけ回覧が回ってこないなど、仲間はずれや無視もパワハラ行為とされる場合があります。
これは単なる幼稚なイジメですから、境界線が難しいということはないでしょう。
人としてどうあるべきかを考えれば、このようなイジメをすることはないはずです。
パワハラ行為には気をつけよう!自身の振り返りが重要
パワハラ行為は完全NGなものと、指導との境界線が難しいグレーゾーンのものがあります。
境界線を見極めるために重要なのが自身の振り返り。
指導に熱が入ってしまう気持ちはわかりますが、日々の言動がパワハラ行為に該当しないかを、客観的に見つめる冷静さが必要です。
上司と部下、先輩と後輩という職場の立場に違いはあっても、根底にあるのは人と人との人間関係。
何をしたら相手が傷つくかを考えるという、人間関係の基本に立ち返ってみれば、指導とパワハラとの境界線に悩むことはなくなるのではないでしょうか。
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