日本語の中には「非常」という言葉があります。
この言葉は普段と違う、差し迫った状態のことを言います。
「非常事態」などは災害の多い日本ではよく使う言葉ですが、ここではその「非常」という言葉について、掘り下げてみたいと思います。
「非常」の意味や正しい使い方、反語や類義語、英語や中国語での表現についてもご説明します。
目次
非常の読み方
「非常」とは「ひじょう」と読み、他の読み方はありません。
「非」とは「ひ」「あらず」「そしる」と読み、名詞では「道理に反すること」「正しくないこと」「誤りや欠点」「物事がうまくいかないこと」を意味します。
また、名詞や形容動詞について、打ち消しの意味を表す接頭語にもなります。
「常」は「じょう」「つね」「とわ」「とこしえ」と読み、「いつもと変わらない」「特別ではない」「普通の」「いつも変わることがない道徳」「常陸の国」といった意味があります。
非常の意味について
「非常」は漢字の意味からも「常に非(あら)ず」「普通に非(あら)ず」と読み取れます。
なので「一通りではないこと」「普段と異なること」「思いがけない異常なこと」という意味になります。
「非常事態」や「非常口」なんて言葉もありますが「非常」の意味を正しく使って説明するのなら、それぞれ「いつもと違う状態」「いつも使う出入り口でない出入り口」という意味になりますね。
また「非常」には「とても」という意味もあります。
非常の正しい使い方
非は否定の言葉ですが「非常に」の場合「(普通より)すごい」「大変だ」という意味になるので、肯定否定両方で使えます。
「不」もまた後ろにつく語を打ち消す接頭語ですが意味や使い方は単純です。
例えば「不満」「不必要」は単純に「満足できない」「必要ではない」となります。
一方「非」は後ろにつく語を「本来の姿を打ち消して、そうではない」とする言葉です。
「非合理」と「不合理」はどちらも同じ単語につき「合理的でない」という意味になりますが、「非」は感情的にとらえられ「不」は単純かつ理論的にとらえられます。
非常の間違った使い方
非常は「とても」「すごく」「つねではない」「普通ではない」という意味なので、この意味さえ合っていれば間違って使うことはあまりないでしょう。
「非常」という言葉で間違えるとしたら「非・無・未・不」といった接頭語の使い方ではないでしょうか。
例えば「常」につく接頭語には「無」があり、意味は「◯◯がない」です。
「無常」とは「定まらない」になりつね・普通の状態自体がなくなってしまうので、「非常」とは前提から意味が違ってしまいます。
非常を使った例文
では、以上を踏まえて「非常」を使った例文を2つご紹介したいと思います。
例文1は「大変だ、すごい」という意味の例文。
例文2は「常ではない」「普通の状態ではない」という意味での「非常」を使った例文です。
どちらも日常的に良く使われる言葉であり、似ているようで微妙に違う使い方になっているので、よく読んで確認してみましょう。
非常の使い方【例文その①】
例文1 店員とお客の会話
「お客様、何かお探しでしょうか」
「パソコンとプリンターが欲しいです」
「ご希望の機種はありますか?」
「いえ、詳しくないので全然わからなくて。
インターネットと写真の印刷ができるくらいの最低限の機能があればいいんだけど」
「でしたらこちらはいかがですか?
パソコンとプリンターがセットで割引になっています。
バラバラで購入するより非常にお買い得ですよ」
この「非常に」は「とても」や「すごく」といった意味になります。
非常の使い方【例文その②】
例文2 自分以外の家族が熱を出した母親とご近所さんの会話
「あれ、今日はお兄ちゃんはお休み?」
「そう、下の妹が幼稚園から風邪をもらってきてね。
どうもうつってしまったみたいなの」
「それは大変ね」
「2人揃って病院に連れて行ったけど、2人で熱出して並んで寝てるわ」
「パパとママは平気?」
「私はなんとかね。でもパパは喉が痛いみたい。
これで熱でも出されたら非常事態だわ」
「非常事態」となると「日常ではない緊急事態が起こっている」という意味になりますね。
非常は英語でなんて言うの?
「非常」を英語で表すと、emergencyです。
これは非常事態、緊急事態という意味になりますので「思いがけない異常なことが起こった」という意味の方の「非常」になるでしょう。
エマージェンシーブレーキ、エマージェンシーランプなんていうと緊急の時に使用するものですし、エマージェンシールームはERとも略され、緊急治療室のことをいいます。
他にも極めて、とてもなどと訳されるextremelyやvery muchでも、「とても」「すごく」と訳される「非常」と似た意味になります。
非常は中国語でなんて言うの?
「非常」は中国語でも「非常」になり、意味は「普通でない」「普段と違う」「際立って」「たいへん」「この上なく」になるので、日本語と大体同じ意味で理解し、使うことができそうです。
「異常である」「ただならぬ」という意味ですと、形容詞・副詞の「异常」とも訳すことができます。
しかし意味も文字もほとんど同じであるなら中国語でも「非常」と覚えていた方が、日本人には馴染みが深くて覚えやすく、わかりやすいかもしれませんね。
非常の類義語や関連語は?
次は「非常」の類義語をあげてみましょう。
思いがけない事態を指す「非常」の場合は「異常」「異例」「変事」「緊急」「危機」「不慮」「危急」などです。
日常を超えた事態か突発的に起こった事態かで使い分けましょう。
とてもといった意味の「非常」は「とても」「すごく」「大いに」「甚だしい」「すばらしく」あたりが類義語と言えます。
このように「非常」の類義語は「名詞」か「形容動詞」かで変化しますので、注意して下さい。
非常の対義語は?
「非常」の対義語は「通常」「平常」「平生」「平常」「尋常」です。
「非常」はいつもと違うという意味なので、その反対になる対義語の意味は全て「普通」「いつも通り」という意味になります。
「尋常」でよく使う表現としては「尋常でない」があげられると思いますが、この意味もまた「非常」と同じ「いつも通りではない」「普通ではない」という意味になります。
「いつも通り」の「尋常」を「でない」で打ち消しているからです。
非常を使った熟語や慣用句、ことわざはある?
「非常」の慣用句はとても多いので、一部をご紹介しましょう。
「非常口」「非常事態宣言」「非常食」「非常召集」「非常階段」「非常手段」「非常警報」
並べてみるとすべて緊急時、緊急性を持って行われることだとわかります。
このように「非常」の慣用句でも「非常」は緊急である、普通ではない事態という意味で使われています。
上記の意味での「非常」を表すことわざといえば「予期しない突発的な事故が起こる」という「青天の霹靂」が近いかもしれません。
非常にまつわるサイト
「非常」という言葉からイメージされるサイトを2つご紹介します。
https://emg.yahoo.co.jp/
「非常」といえば「非常事態」。
日常とは違う異常事態が起きた時に便利なサイトです。
Yahoo!防災速報はYahoo!ジャパンが配信している災害情報の情報配信アプリです。
緊急地震速報や豪雨、津波、避難情報をアプリで配信しています。
突然のゲリラ豪雨も通知してくれるので、スマートフォンにダウンロードしておくと便利です。
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/kyuu-adv/soudan-center.htm
#7119をご存知ですか?
急な病気、怪我をした時に救急車を呼ぶべきか、病院に行くべきか、迷った際の相談窓口です。
こちらは東京消防庁救急相談センターですが、他県でも同様の相談窓口が用意されているかもしれないので、是非一度検索してみて下さい。
小さなお子さんや高齢者のいる家庭の「非常」時には特に重宝するでしょう。
非常の意味や使い方についてのまとめ
「非常」には形容動詞として「とても」「すごく」といった意味と、名詞としての「普段と異なること」「日常にない異常なこと」という意味があります。
「非」は打ち消しの接頭語。
「常」を打ち消して「常(普段通り)ではない」と使われていますが、「非常」を形容動詞として使うと否定でも肯定でも使うことができます。
名詞・形容動詞で「非常」の類義語は変わります。言い換える時は文章内の「非常」の意味に注意しましょう。
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