「企業年金」という言葉、ニュースで耳にすることもありますよね。
企業年金とは、一体どのようなものなのでしょうか。
年金支給の仕組みをはじめ、企業年金についてわかりやすく解説します。
ビジネス知識のひとつとしても、知っておいて損はないですよ!
目次
企業年金とは?基本の仕組みについて
そもそも企業年金とは何なのか。
簡単に言うと「企業が支払う年金のこと」です。
まずはその基本の仕組みから、もう少し詳しく説明しましょう。
企業が支給する年金の仕組みのこと
企業年金とは、企業が社員に対して年金を支給する仕組みのことを言います。
「年金」というと、国が用意してくれたいわゆる「公的年金」を指しますが、企業年金は、国が管理する公的年金とは別に受け取ることのできる年金です。
個人で加入する保険会社などの民間サービス同様に、企業年金も老後の備えとなる年金のひとつなのです。
退職金を分割したもの
実はこの企業年金は、退職金と深い関係があります。
退職金とは、文字通り、会社を辞める時にもらえるお金ですよね。
この退職金をまとめてもらうのではなく、分割して少しずつ受け取る場合に「企業年金」として扱われます。
退職金が辞める時にもらうお金であるのに対し、企業年金は一定年齢を迎えた後に分割して支給されることになります。
採用している企業は少数派
企業年金は、すべての企業にある制度というわけではありません。
長引く不況などの影響もあり、近年では採用している企業は少ない傾向に。
歴史が浅い企業では企業年金を採用している例は少なく、一方で、大企業や歴史の持つ企業に多いのが特徴です。
また、正社員のみを対象とする企業が多く、契約社員やパートとして就業していた期間は対象とならない場合がほとんどですので、契約形態によっては対象とならないこともあります。
どんなものがあるの?企業年金の種類について
企業年金にはいろいろなものがありますが、ここでは主に、3つの年金制度について解説しましょう。
「確定給付企業年金」「確定拠出年金」「厚生年金基金」について、それぞれみていきましょう。
確定給付企業年金
まず、確定給付企業年金とは、毎月一定額を積み立てておき、退職した後に、決まった額のお金が支給される制度です。
「確定給付型」と呼ばれることもあります。
確定給付企業年金は、会社が一括して管理してくれていますので、いくらもらえるかはっきりしているのが大きな特徴。
他の制度に比べ「安定性が高い」と言われています。
その一方で、会社に依存しているので、業績悪化や倒産の場合には、支給額が減少する懸念があります。
確定拠出年金
確定拠出型年金とは、会社側が拠出した掛け金を社員が運用する年金制度のこと。
会社側は原則としては運用にノータッチで、社員が自ら運用します。
企業の業績悪化によって年金給付額が減るようなリスクはありませんが、一方で、自らが手掛けるリスクが伴います。
そのため、「不安定」と言われることもあります。
厚生年金基金
国が管理・運営する公的年金である「厚生年金」と紛らわしいのですが、「厚生年金基金」は企業年金の一種です。
厚生年金基金は、企業が社員のために基金を設立したもので、老後の生活安定を目的としています。
この厚生年金基金に加入している企業の場合は、自動的に従業員も加入することになります。
その場合、厚生年金基金が国の厚生年金の給付も代行していて、厚生年金に上乗せして基金独自の給付が行われます。
途中で会社を辞めてしまったら?転職後の企業年金
企業年金は、その企業に勤めているからこそ受けられる年金の制度です。
では、退職した場合の給付はどうなるのでしょうか。
一時金として受け取るか、年金として受け取るか
定年を待たずに企業を退職した場合、年金として受け取るか一時金という形で請求するかを選択することができます。
定年近くまで勤務していた場合は、年金支給を待つというケースが多いようですが、早期に退職した場合は一時金を選択する方が多いようです。
なお、一時金を受け取った場合は、将来年金を受け取る権利はなくなります。
企業年金を移換できるケースも
転職先企業でも企業年金の制度がある場合には、企業年金を新しい就職先に移換できるケースもあります。
これまでに積み立てた資金を転職先企業、あるいは企業年金連合会へ移換できるのです。
加入先の企業年金のルールに依るところが大きいのですが、加入期間によっては掛け金の一部を返還しなければならないケースもあるため、全額移換できないという場合も。
また、一時金をすでに受け取ってしまった分に関しては、移換することはできません。
企業年金をひとつにまとめるメリット
企業年金を新しい就業先へ移換し、ひとつにまとめることには次のようなメリットがあります。
企業年金は企業単位での運営ですので、たとえば、A社、B社、C社と転職を繰り返すと、その数だけ企業年金にも加入していることになりますよね。
加入先が複数ということは、年金の請求手続きはもちろん、住所変更などの細々とした手続きもそれぞれ必要ということ。
一方、これらの年金をひとつにまとめると、細かい手続きもひとつにまとめることができます。
ひとまとめにすることで、加入期間が合算できるため、企業年金の受け取りに有利になることもあります。
ひとまとめにすることによるリスクも
メリットがあればデメリットもあります。
企業年金をひとまとめにすることで、年金の運用もひとつの制度に頼ることになりますよね。
そのため、企業が倒産したり、基金が破たんしたりといったリスクをまともに受けることに。リスクも集中してしまうというわけです。
また、企業年金によって、計算方法や給付率にも違いがあるため、将来もらえる額が変わるケースもあります。
制度の変更によっては、年金移換の仕組みそのものが変わることもありますので、退職時のメリット・デメリットをよく検討することが必要です。
老後に給付を受けるには?企業年金の給付手続きについて
企業年金の給付のためには、正しい手続きを経る必要があります。
損をしないためにも、手続きについてはしっかりおさえておきましょう。
企業年金の種類によって、給付時期も給付方法も違う
企業年金の給付を受ける際には、請求を行う必要があるのですが、加入していた基金や年金制度によって、支給開始年齢も給付方法も異なります。
退職する際は、あらかじめ請求方法や支給開始時期について確認しておくようにしましょう。
手続きの疑問点も、退職前に人事や総務に相談しておいた方が安心です。
規定の変更には要注意
退職してから支給開始年齢までに、規定が変更となるケースももちろんあります。
公的年金がそうであるように、年金制度そのものが昨今見直されていますので、加入していた企業年金の制度変更には敏感になっておく必要があるのです。
「知らなかった」で損をしては大変もったいないもの。
定期的に確認する習慣をつけておきたいですね。
住所変更も忘れずに
規定の変更をはじめ、様々なお知らせを受け取るには住所変更は必須です。
住所変更をしておかないと、書類が届かなくなり、給付に関する重要な情報を手に入れられなくなることも。
新住所へ郵便物が転送されるのは、引越からおよそ1年。
それまでには必ず、企業年金に登録している住所も変更するようにしましょう。
加入の有無は、若いうちからしっかりと確認しておきましょう
企業年金は公的年金にプラスして受け取れる、頼りになる老後の貯えのひとつです。
これまでの就業先で加入していた方は、もれなく受け取れるよう、もう一度確認してみてください。
また、「入社と同時になんとなく加入していたみたい」というように、曖昧な方も多いもの。
退職した企業も含め、加入の有無は早めに確認し、損のないよう受け取りの方法を検討してみてくださいね。
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