医療費控除の確定申告を行うには、領収書を提出するのが従来の方法でした。平成29年分より領収書の提出に替えて、医療費控除の明細書を提出するのが原則となりました。
そもそも医療費控除の明細書とは何を指しているのか?から解説します。面倒そうだけど、実際には難しくないこともわかります。また医療費のお知らせを用いて集計を省く方法や、パソコン等で集計する方法もあることも解説します。
目次
医療費控除の明細書とは?~改正で義務化~
医療費控除の明細書自体は、平成28年分以前からあります。税務署提出のために医療費の領収書を入れる袋の表面に印刷されていたのが、医療費控除の明細書です。
平成29年分以降提出が原則となった医療費控除の明細書も、ベースは平成28年分以前の明細書です。税務署でもらうことができますし、国税庁Webサイトからもダウンロードできます。
参考 医療費控除の明細書PDF国税庁Webサイト改めて明細書の提出を義務化したのは、従来は年間の医療費合計額だけを明細書に記載し、税務署に領収書をチェックしてもらうという方法も認められていたからです。
平成29年分以降も3年間は、合計額だけ記載して領収書を提出する方法も認められます。
医療費控除の明細書の提出方法は3通りある
医療費控除の明細書の作成・提出方法は3通りあります。
1点目は、確定申告ソフトや国税庁のWebサイトにある「確定申告書等作成コーナー」で確定申告書一式を作成し、e-taxで電子送信する方法です。操作方法に従って医療費の入力を行えば、自動的に明細書を提出したことになります。
参考 医療費控除の明細書の作成確定申告書等作成コーナー2点目は確定申告書等作成コーナーを使うものの、医療費に関しては合計額を入力し、別途明細書を手書きで記入する方法です。電子送信した場合は医療費控除の明細書を税務署に郵送し、確定申告書一式を書面提出する場合は提出書類に医療費控除の明細書を含めます。
3点目は、医療費控除の明細書を含め確定申告書一式を手書きで作成し、税務署に提出する古典的な方法です。
医療費控除の明細書は確定申告書等作成コーナーで簡単に!
多くの申告者に利用されている確定申告の方法は、確定申告書等作成コーナーを利用することでありおススメです。
電子申告(e-tax)・書面での提出どちらにも対応できます。また医療費控除の申告方法に対しても、
- Web上で領収書や医療費通知に基づき入力
- 合計額のみ入力して、別途明細書を手書き作成
- エクセルで集計したフォームを取り込む
と幅広く対応しています。
平成30年分の確定申告からは、給与以外の所得が無いサラリーマンであれば、スマ―トフォンから医療費控除の確定申告を行うことも可能になります。
医療費控除の明細書に使える医療費のお知らせとは?
従来医療費控除の確定申告は、領収書を提出するものとされ、領収書の代わりに健保組合などから送られる医療費のお知らせを提出することは認められませんでした。
しかし平成29年分より一定の要件を満たす医療費のお知らせ(医療費通知)を提出することも可能になり、集計の手間を省けるようになりました。
医療費通知が要件を満たすかは、健保組合など発行先に確認する必要があります。
医療費控除の明細書を医療費通知より記載
医療費のお知らせに記載されている事項で、明細書「1 医療費通知に関する事項」に記載すべきなのは、下記2点です。
(1)欄:医療費のお知らせに記載された医療費の合計額
(2)欄:上記のうち、申告年分に対応する医療費の合計額
そして
(3)欄:申告年分に対応する医療費に充当した保険金があれば、保険金額
(支払った医療費を超えていれば医療費の額だけ)
も記入します。
例えば平成30年度分として発行される協会けんぽ医療費通知の対象期間は、平成29年11月~平成30年9月です。(1)欄は平成29年11月~平成30年9月の医療費、(2)欄は平成30年1~9月の医療費を記載します。以下、記入例を示します。
確定申告書作成コーナーで入力する場合も、同様に3つの欄に記入します。
医療費控除の明細書を領収書の集計で作成
医療費控除の明細書は、領収書の集計で作成することが一般的です。「2 医療費の明細」欄に集計したものを記載します。
医療費控除の明細書にそのまま記載する方法、あるいは確定申告書作成コーナーで領収書を集計していく方法の他、次に紹介するエクセルを使った方法があります。
医療費控除の明細書はエクセルでも作成できる
医療費控除の明細書を領収書に基づいて作成する際、国税庁が用意したエクセル集計フォーム(平成30年分:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/h30junbi/iryouhi-download.htm
)を利用する方法があります。
確定申告の時期だけでなく、支払の都度コツコツと入力を進めて行くことも可能です。
医療費控除の明細書に日付は不要
医療費控除の明細書には、日付を書く欄がありませんし、日付の記載は義務ではありません。
エクセル集計フォームVer3.1には、支払の日付を書く欄がありますが、領収書を1件ずつ入力していく場合に記入しておくと良い程度の項目です。
医療費控除の明細書で同じ病院は1行に書けるか?
同じ病院に週1度、月1度のように定期的に通っている場合、該当する病院の分は1行にすることができます。
医療費控除の明細書を提出し領収書を提出しない場合、領収書1枚分を明細書1行に記入するように思えますが、記入量を減らすことができます。
たとえば平成30年の1年間に通った医療機関がA病院・Bクリニック・C薬局の3カ所であれば、記入例のように3行分とします。
エクセルで入力する場合、確定申告書等作成コーナーで入力していく場合も、同様です。
医療費控除の明細書は人ごとに分ける必要はある?
明細書の書き方として、自分と家族の分を別々の紙にする必要はありません。
医療費控除は申告者本人だけでなく、お財布をいっしょにした親族(同一生計親族)がかかった治療に対する医療費も対象にすることができますが、同一の用紙に記載可能です。
ただし「医療を受けた方の氏名」欄が明細書にあるので、自分と家族が同じ病院にかかっていたとしても、記入例のように同じ行に書かず分けなければいけません。
エクセル集計フォーム、確定申告書等作成コーナーで入力していく場合も、同様です。
医療費控除の明細書で医療費の区分はどう判別?
医療費控除の明細書には、「医療費の区分欄」があります。通常の病院医療費であれば、「診療・治療」を選びます。
病院内・調剤薬局・ドラッグストアを問わず薬代に関しては、「医薬品購入」を選びます。介護費用のうち医療費控除の対象になるものは「介護保険サービス」を選びます。
次に説明する通院の交通費などは、「その他の医療費」を選びます。
医療費控除の明細書に交通費を記載する方法
通院交通費の場合、区分は「その他の医療費」ですが、支払先の名称は病院名と交通機関、どちらを書くのでしょうか?
支払先の名称は交通機関のほうを記入します。通常認められるのは電車・バス代ですので、JR東日本・東急バスなどと記載します。
通院にタクシーを使わざるを得ない場合に控除対象にできるタクシー代であれば、タクシー会社を記載します。
医療費控除の明細書で所得金額の合計額はどう計算するの?
医療費控除の計算式は下記の通りです。
医療費の額 - 保険金などで補てんされる金額 - 足切額
足切額は原則10万円ですが、所得金額の合計額が200万円以下の場合は、所得金額の合計額×5%です。
所得金額の計算ですが、給与所得者であれば年収311万円、65歳以上で年金暮らしであれば年収320万円を超えていれば、足切額は10万円ですので所得合計の計算は必要ありません。
明細書に手計算で記載する場合、通常は確定申告書第一表で計算した「所得金額」の「合計」欄を記載すればいいのですが、不動産譲渡や株・FX取引による所得があり第三表にも記載する場合は変わってきます。
計算が面倒になるケースもあるので、自動的に計算される確定申告書等作成コーナーを利用するのが無難です。
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